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たぬきの 糸車

むかし、ある 山おくに、
きこりの ふうふが すんで いました。
山おくの 一けんや なので、
まいばんのように
たぬきが やって きて、
いたずらを しました。
そこで、きこりは わなを しかけました。

ある 月の きれいな
ばんの こと、
おかみさんは、糸車を
まわして、糸を つむいで いました。
キーカラカラ キーカラカラ
キーカラカラ キーカラカラ

ふと 気が つくと、やぶれしょうじの あなから、
二つの くりくりした 目玉が、
こちらを のぞいて いました。

糸車が キークルクルと まわるに つれて、
二つの 目玉も、 くるりくるりと まわりました。
そして、 月の あかるい しょうじに、
糸車を まわす まねを する たぬきの かげが
うつりました。

おかみさんは、おもわず ふきだしそうに
なりましたが、だまって 糸車を
まわして いました。

それからと いう もの、
たぬきは、 まいばん まいばん
やって きて、糸車を まわす
まねを くりかえししました。
「いたずらもんだが、
かわいいな。」

ある ばん、こやの うらで、
キャーッと いう さけびごえが しました。
おかみさんが こわごわ いって
みると、いつもの たぬきが、
わなに かかって いました。

「かわいそうに。 わなになんか
かかるんじゃ ないよ。
たぬきじるに されて しまうで。」
おかみさんは、そう いって、
たぬきを にがして やりました。

やがて、山の 木の はが
おちて、ふゆが やって きました。

ゆきが ふりはじめると、
きこりの ふうふは、村へ
りて いきました。

はるに なって、 また、
きこりの ふうふは、
山おくの こやに
もどって きました。

とを あげた とき、おかみさんは、あっと
おどろきました。

いたのに、白い 糸の たばが、山のように
つんで あったのです。
そのうえ、ほこりだらけの はずの 糸車には、
まきかけた 糸まで かかって います。
「はあて、ふしぎな。どう した こっちゃ。」
おかみさんは、そう おもいながら、土
ごはんを たきはじめました。
すると、
キーカラカラ キーカラカラ
キークルクル キークルクル
と、糸車の まわる 音が、
きこえて きました。
びっくりして ふりむくと、
いたどの かげから、
ちゃいろの しっぽが
ちらりと 見えました。

そっと のぞくと、
いつかの たぬきが、
じょうずな 手つきで、
糸を つむいで いるのでした。

たぬきは、つむぎおわると、こんどは、いつも
おかみさんが して いた とおりに、
たばねて、わきに つみかさねました。
たぬきは、ふいに、 おかみさんが のぞいて
いるのに 気が つきました。

たぬきは、ぴょこんと そとに とびりました。
そして、うれしくて たまらないと いうように、
ぴょんぴょこ おどりながら かえって いきましたとさ。