
貧乏なお祖父さんとお祖母さんがいました。
「傘を売って食べ物を買って来るよ。」
お祖父さんは雪の中をでかけて行きました。
「傘はいらんかね。傘はいらんかね。」
傘を買う人は誰もいまあせん。
「今日はさっぱりだ。家に帰るとするか。」
途中の道にお地蔵様が立っていました。
「お地蔵様、雪の中で寒かろう。」
お祖父さんはお地蔵様に傘をかぶせました。ところが一つだけ傘がたりません。
「お地蔵様、これで勘弁してくだされ。」
お祖父さんは自分がかぶっていた傘をぬいで、お地蔵様にかぶせました。
「これでお地蔵様も寒くないだろう。」
「婆様、今日は傘が一つも売れんかった。帰り道お地蔵様が寒そうだったので、傘を全部お地蔵様にかぶせて来たよ。」
「それはそれは爺様よいことをしましたね。中に入ってはやくあったまってくださいな。」
「よっこいせどっこいせ。よっこいせどっこいせ。」
かけごえがだんだん大きくなって来て、家の前でどすーんと大きな音がしました。
「あれなんとまあ。」
食べ物とお金が入った袋が家の前にどさりつまれていたのです。
よく見ると雪に小さな足跡があります。足跡をたどって行くとお祖父さんが傘をかぶせてあげたお地蔵様の前に着きました。
「お地蔵様が傘のお礼にくれたのか。」
それからはお祖父さんとお祖母さんはずっと豊かに暮らしました。