ある おおきな 木に、
いっぴきの あおむしが いました。
あおむしは、 まいにち
木の はを たべて、
からだが ちょうに かわる
ひを まって いました。
ある とき、 いつものように
はを たべて いると、 どこからか、
むしゃむしゃ むしゃむしゃと、
おとが きこえます。
なんと、 じぶんと そっくりな あおむしが、
おなじ 木で、 はを たべて います。
「だめ だめ。 この 木は、 ぼくの 木。
ぼくの はっぱ。」
あおむしが いうと、
その あおむしも、 いいました。
「この 木は、 わたしの 木。
だから、 はっぱも、 わたしの はっぱ。」
にひきが いいあいを して いると、
どこからか、 もりもり もりもりと、
おとが きこえます。
なんと、 じぶんたちと そっくりな あおむしが、
おなじ 木で、 はを たべて います。
と、 いっぴきめが いいました。
「わたしの はっぱを たべないで。」
と、 にひきめも いいました。 すると、
「そんな こと、 しるものか。」
さんぴきめが いいかえしました。
あおむしたちは おおげんかか。
その ときです。
「うるさいぞ。」
おおきな 木が、 ぐらきと ゆれて いいました。
「みんな、 もっと うえまで のぼって、
そとの せかいを みて ごらん。」
あおむしたちは、 いわれた とおりに、
のぼって いきました。
いちばん たかい えだに つくと、
さんびきは、 めをまるく しました。
この おおきな 木は、 はやしの なかの
たった いっぽんだったのです。
「ぼくら、 こんなに ひろい ところに
いたんだね。」
「そらも、 こんなに ひろいんだね。」
とおくには、 うみが みえます。
あおむしたちは、 まだ うみを
しりません。
「あの ひかって いる ところは、
なんだろう。」
さんびきは、 えだに ならぶと、
せのびを しました。
「きれいだね。
からだが ちょうに かわったら、
あそこまで みたいな。」
「わたしも、 あそこまで
とんで みたい。」
「それなら、 みんなで いこう。」
さんびきの あおむしは、
やくそくを しました。
そして、 くんねり くんねり
おりて いきました。
木の はが、
さらさら そよいで います。