ある朝、若者が草刈に行くと鶴が罠にかかっていました。かわいそうに思った若者は罠を丁寧に外てやりました。鶴は嬉しそうに飛んで行きました。
とんとんとん。
夜になって誰かが若者の家の戸を叩く音がしました。見ると、美しい娘が立っていました。
「道に迷ったので家に泊めて下さい。」
一日たっても娘は帰ろうとしません。
「あなたのお嫁にして下さい。」
「俺は貧乏なので嫁に出来ない。」
「貧乏でもいいから、お嫁にして下さい。」
こうして、二人は仲良く暮らし始めました。
暫くしてから、娘は若者に機織部屋をつくって欲しいと頼みました。
「私が機を送っている間は決して部屋を覘かないで下さいね。」
娘は部屋に入って、機織をはじめ、朝に成ると、綺麗な布を持って出て来ました。
布は高い値段で直ぐに売れました。
「決して部屋に覘かないで下さいね。」
娘は毎晩綺麗な布を織りますが、若者は糸も買ってやらなかったのに、どうして布が織れるのか気に成って来ました。
とうとう我慢が出来なく成った若者は部屋を覘いて、驚きました。鶴が羽を抜き取って、布を織っていたのです。
「私はあなたに助けられた鶴です。姿をみられたので、お分れするしかありません。」
娘は部屋から出て来て、そう言うと、鶴の姿に成って、飛んで行ってしまいました。