むかし、ある所に、大変綺麗なねずみの娘がいました。ねずみのお父さんとお母さんは、娘のじまんばかりします。
「この子は、世界で一番えらい人のところでなければ、よめにやれないね。」
「そうですとも。でも、世界で一番えらい人って、誰でしょうね。」
「そりゃやっぱり、おてんとう様じゃろう。」
ねずみのお父さんとお母さんは、娘をつれて、おてんとう様の所へ行きました。
「あなたは世界え一番えらいお方じゃ。娘よめにもらってください。」
「わしは世界で一番えらいって?いやいや、わしもかなわないものが世界にはおるぞ。」
「ええ?それはいったい、どなたでございますか?」
ねずみのお父さんがたずねました。
「雲どのじゃ。雲どのには、わしの光もさえぎられてしまうからのう。」
それを聞いて、ねずみのお父さんとお母さんは、娘をつれて、雲どののところへ行きました。
「いやいや、わしも風さんにはかなわない。風がふけば、わしはとばされてしまうからね。」
そこでねずみのお父さんとお母さんは、風の所へ行って、娘をよめにもらってくれるように、たのみました。すると風は、
「せっかくだが、わしよりえらいものに壁さんがおる。壁さんあると、わしはそこから先へはいけれない。壁さんが一番えらいんだよ。」
そこでねずみたちは、壁の所へ行って、娘をよめにもらってください、とたのみました。すると、壁は、
「何だって?わしよりえらいのはねずみさんじゃないか。わしもねずみさんには穴を開けられてしまうもの。」
それを聞いて、ねずみのお父さんは、
「何だ、世界で一番えらいのは、ねずみじゃないか。」
と、言いました。そこでねずみの娘は、ねずみの若者とけっこんすることになったそうです。
めでたし、めでたし。